北アルプス*烏帽子岳〜野口五郎岳のご報告 (
BY くぼっち)
(2010年8月3日(火)〜5日(木))
<1日目>
朝4時半に、調布でこのちゃんをピックアップし、一路中央高速で七倉へ。大町にある朝から開いている西友で食料を調達し、8時半到着。七倉で登山届提出。受付のリリィさんの質問攻めにあう。「あなたにとって山とは何?」「あなたはなんで山に登るの?」えっ?ブナ立尾根ってこんな深い質問に答えないと登れないんだ・・・と思ってしまった。急な質問にしどろもどろに。この次は、完璧な答えを用意して登りに来ます。リリィさんは遭対協の人なので、山に入る人がどの程度の実力かをこうして楽しく会話しながらチェックしているのかも。山の安全のためにありがとうございます。などと勝手に理解し感謝していたが、タクシーの運転手さんも山小屋の奥さんもこの話をしたら一様に、「あの人はおしゃべり好きだからなあ。」という一言。私は前者だと確信しています。とても楽しい素敵なお姉さんでした。
今年は登山者が少なくて、1日の入山者が100人を超えたことはないとのこと。でも、登る立場でいえば少ないほうがありがたい。裏銀座の魅力は、静かな北アルプスを味わえることなのだから(山小屋のかた、スミマセン)。おかげで山小屋も広々寝られたし、烏帽子も2人きりで独占できた。
タクシーで高瀬ダムへ向かい(¥2000)そこからいよいよ北アルプス3大急登のブナ立尾根を登る。不動沢吊橋では、崩壊した白砂が一面に広がっていた。毎年ものすごい量の砂が流入するので、取り除き続けないと高瀬ダムが埋まってしまうとのこと。ブナ立尾根には0〜12の番号の標識があり、2つごとに小休憩をとって登った。苔が生えたしっとりとしたブナの樹林帯は、とても静かで、表銀座の賑やかさとは全く別の落ち着いた北アルプスが味わえる。木の根が張った段差のある急登続きだったが、標識のおかげでペース配分ができて登りやすく、ダムから4時間ちょっとで登れた。
烏帽子小屋に荷物を置き、早速烏帽子に向かう。途中、はるか霧のかなたに浮かぶ烏帽子が見えた。その姿は、まるで天空の城ラピュタ。えっ?あのてっぺんに立つって、うそでしょー!ほんとに登れるんだろうかと信じられない気持で歩きだす。ところが、近づくにつれ「登れる?」「登れるかも?」「登れそう」「なんだ登れるなあ」と登れる度がどんどんUPするから不思議。岩鋒の途中には縦と横の鎖がそれぞれ1本あった。勝手に「烏帽子のタテバイ」「烏帽子のヨコバイ」と名付けさせてもらった。
山頂の標識は一人ずつしか登れない岩の途中にある。もし団体さんがいたら相当な撮影渋滞が起こること間違いなし。でも、今日はこのちゃんと二人占めなので、たっぷり撮影会を開くことができた。せっかくなのでてっぺんにもよじ登ってみた。こういう岩をよじ登るときにいつも思うが、下りるときの足の置き場を確かめた上で登らないとあとで大変な目に・・・。宝剣岳のてっぺんや金峰山にある大日岩のてっぺんによじ登った時も、行きはヨイヨイ帰りが危なかったなあ・・・。小屋への帰り道、船窪から縦走してきたパーティに出会った。「先に行ってください。我々、魂の抜け殻で歩いてますから。」と言って道を譲られる。聞けば、登って下りての連続でかなりきついコースとのこと。いつか覚悟を決めて歩きに行きますか。
烏帽子小屋に戻り、早速ビールで乾杯。自分で担いできたビールの味は最高。夕食時、北海道の広川さんと日高の話、ヒグマの話で盛り上がる。ニペソツもトムラウシも、そして北アルプスも本当に素晴らしい山ですよね。
<2日目>
4時起床。自炊場で味噌汁を作り、それにこのちゃんが持参した10秒で溶けるおもちを入れての朝ごはん。このおもちはナイス!味噌汁に入れて良し、ラーメンに入れて良し!早速、東京に戻るとダイエーに買いに行き、次回の山行からは私の常備食となる。モーニングコーヒーも味わった後、5時出発。目の前に、朝日に染まる赤牛が雲ひとつない姿を見せてくれた。ちょうど1年前、赤牛への道を一人縦走しながら、向かいの尾根を見て、来年は野口五郎に行きたいと思ったのだった。天気は最高。さあ、出発。
三ッ岳へのなだらかな長い登り道を歩きながら、「そろそろ?」「きっとあの辺まで行けば」の期待で胸が膨らみ始める。これから見える槍。その雄姿を見ながら今日一日歩けるのかと思うと、見える前から嬉しくて仕方ない。長い登りもなんのその、自然に足は前へ前へ。三ッ岳手前でついに向こうが一望できる場所に。槍はもちろん、富士山も大きな姿をくっきりと見せてくれている。「あぁ、来てよかった。」と思うこの瞬間。さらに振り返れば、赤牛の向こうに立山の街まで見えた。
三ッ岳からの稜線はお花畑のオンパレード。当然のことながら、このちゃんは花と景色に心を奪われ、写真撮影に夢中。写真家このみのハートに火をつけるには十分すぎるこのアングル。腕が鳴るんだろうなあ。写真の出来上がりが楽しみ。
このちゃんより一足先に野口五郎小屋に着くと、小屋のお兄さんが話しかけてくれた。この稜線は風の日はすごいらしい。小屋もドーンというすごい音で揺れるのだという。同じ山が天候次第で全く別の顔になるのだから、やはり山は恐ろしい。一歩も前に進めないほど強風の野口五郎を想像しながら顔を上げると、目の前には真っ青な空に白く微笑む優しい今日の野口五郎があった。
写真撮影を終えたこのちゃんが到着し、一登りで山頂へ。360度の展望で、北アルプスの主だった山がすべて見渡せる。あまりの美しさに1時間以上ものんびり。北アルプスの山々を見ながらのコーヒーブレイク。なんと贅沢な時間。出発する決心がつかない素晴らしい眺めだった。南アルプスの山々も名前が同定できるほどよく見えた。一年前に強風で敗退した悪沢岳も見えたので、はるか北アルプスから一週間後の登頂宣言。「来週こそは、がっつり登らせていただきます!」
そうこうしていると、突然超賑やかな団体さんがやってきた。韓国からのパーティだった。その元気さと言ったら、日帰りするのではと思うほどだ。そのパーティにこのちゃんはハングルで話しかけ、アルプスの山々の名前を解説し始めた。さすがこのちゃん。
私たちより後から来た人も、みな下りってしまったので、仕方なく私たちも次を目指すことに。水晶岳に向かって「ヤッホー」をかけると、しっかりやまびこが戻ってきた。そして、お約束の野口五郎「私鉄沿線」♪も歌い、もうやり残すことはないと自分を納得させてから下山開始。三ッ岳は巻いたが、真砂岳は巻き道を通らず山頂を目指した。
真砂岳から竹村新道に入る。しばらくは、崩落地ややせた尾根を通るところがあり、梯子やロープがかかっていた。その崩落地近くに素晴らしいお花畑があり、またこのちゃんの撮影心に火を付けた。人があまり来ない場所にこんなに素晴らしいお花畑を見つけると、10倍得した気分になるのは私だけ?南真砂岳までの稜線からは、すぐ右に硫黄尾根が見える。硫黄でその尾根だけ木がない。赤い岩肌をむき出しにし地獄のような形相を見せていて、その荒々しさに息をのむ。
下山道は、南真砂岳の山頂は通っていない。山頂への道には×印が付いていた。登ってみると広い山頂だったが標識はなかった。
湯俣岳を過ぎると、道は笹藪に変わる。傾斜も緩めになる。あとはひたすら湯俣温泉を目指すだけ。ところが・・・先を歩いていたこのちゃんが、ちゃんとした道があるのにけもの道に入ろうとした。こんな女にだれがした?責任とって下さいよ、副隊長!
展望台付近まで来た頃、後ろから無線で話しながら近付く人の気配。今日は自分たちと単独のお兄さん以外にこの尾根を歩いているグループはないと思っていたのでびっくり。追い抜くときに足元を見ると、長靴だったので二度びっくり。遭対協の人らしく晴嵐荘でまた会えたので長靴の理由を聞くと、あっさり一言。「貧乏だからですよ。」信じる?信じない?
展望台で休んでいると、単独のお兄さんも現れた。すぐ下に見え始めた湯俣川の青さが元気をくれる。そして、ついに晴嵐荘到着。お兄さんと冷えたビールで乾杯。お兄さんは、横浜の山専門店の店員さんで、仕事の合間を縫っては、一人で山に来る山好きだった。一人で北鎌尾根も登ったというからすごい。このお兄さんのお店で山道具を買ってみたいと思ってしまった。
この日の晴嵐荘の宿泊客は、4名のみだった。温泉は硫黄のにおいがして秘湯気分満点。3回も入ってしまった。夕食時、九州のおじさんがビールをごちそうしてくれた。ごちそうさまでした。おじさんは、毎夏北アルプスで1カ月以上、足の向くまま気の向くまま歩き回っているとのこと。私も、いずれそうなるに違いない。
<3日目>
朝食後、噴湯丘に散歩に行った。途中一か所ロープで下りるところがあった。河原の温泉でのんびり朝風呂などという望みが可能かどうかは行けばわかる。川の中の至る所から温泉の熱湯が湧き出ていて、足の置き場がない。あちっ!と思って別の場所に足を置いてもそこもあちっ!これが3回続くと、写真のようなことになり熱湯地獄を味わうことになる。石の上なら大丈夫と思って足を置くと、その石も下から湧き出る温泉の熱湯で焼け石状態。さらに泣きを見ることに!ああ、恐ろしや噴湯丘。
熱湯で足の調子も整った?ところで、七倉までの最後の道を進む。とても整備された歩きやすい道で、アップダウンもほとんどない。林道終点まで1時間、そこからダムまで1時間で歩けた。最後の高瀬トンネルは、全長1キロ。そこを抜けると、3日前に見たブナ立の美しい尾根にまた会えた。
公衆電話もあるが、待ちタクシーも止まっていてすぐに乗ることができた。帰りは、大町温泉薬師の湯で汗を流し、一路東京へ。高速もスムーズで3時間ちょっとでこのちゃん宅に到着。お疲れさまでした。