梅雨に入り、天気予報では雨が降るようだ。今日の候補地は@破魔射場丸南東尾根A雁ヶ腹摺山楢ノ木尾根B新倉山(アヤメ群生地)、のいずれか。取りあえず高尾駅7時26分発、小淵沢行き電車の先頭車両で待ち合わせる。5月には混み合っていた電車も、天気のせいか今日はガラガラだ。副隊長が車窓から山梨の山々と空模様を眺めながら、最終決定。そして雁ヶ腹摺山楢ノ木尾根に向かうことに。
大月駅からタクシーで標高1560メートルの大峠まで一気に上がる。タクシーを降り、身支度を調えていると、縦方向ばかりに垂れ下がった蜘蛛の巣を見つけた。まるで簾のようだ。こんなにスカスカで果たして獲物は引っかかるのだろうか・・・。大峠からすぐに雁ヶ腹摺山登山口に入り、1時間足らずの登りで、あっという間に雁ヶ腹摺山頂に到着。少し前の柔らかな新緑はしっかりとした緑色に変わり、ハルゼミの大合唱がうるさいほどに私たちを出迎えてくれる。ホトトギス、ウグイスなどの鳥のさえずりも賑やかだ。山の季節は、いつの間にか春から初夏へと廻っていた。5百円札に印刷された富士山が眺望できるはずの山頂は、予想通りすっぽり雲の中だ。代わりに、五百円札拡大版案内図の富士山を眺める。富士山は見えなくとも、真っ白な靄に包まれ、木々がしっとり濡れそぼっている風景も、幽玄でなかなか良いものだ。
山頂からは激しいアップダウンを連ねる楢ノ木尾根が延々と続く。急な下りが終わったと思うと、次は小さな登り。下ったり、登ったりを小刻みに繰り返して行く。雨で濡れた木の根が滑りやすく、下りは気が抜けない。所々蜘蛛の巣が張っていたり、両側の草が雨露で濡れていたり、先頭を行く副隊長は蜘蛛の糸と露払いで大変だ。一人びしょ濡れになりながら、ガールズを守ってくれている。両側の笹がすっかり枯れている場所があった。このちゃんが3年程前に登った時には、笹が花を付けていたそうだ。「笹は枯れる前に花を咲かせる」というのは、本当のようだ。地面をよく見ると笹の新芽がちょこちょこ出ている。この笹が茂って再び藪になるにはどのくらいの年月がかかるのだろうか・・・。天気が良ければ南側の眺望が開けるはずだが、今日はあいにくの天気で、うっすら山影が見えただけだった。急坂にロープがあるのかと思ったら、林業用ワイヤーの残骸だった。昭文社の地図で点線の道だけのことはある、ワイルド感たっぷり〜。いったん下った後には、長い登りが待っていた。下り登りを繰り返した後の、100メートル弱の急な登りはかなりハードだ。登り詰めると、「泣坂の頭」の標識が立っていた。猟師が疲れて狩りから帰る時、この長い坂に差し掛かると辛くて泣きたくなったことから、この名前が付けられたとか。確かに泣きたくなるような登りだった・・・。
ここで昼食にしたいところだが、あまりにも薄暗いピークなので、もうちょっと先へ進む。ちょっと明るめな場所で昼食。上り下りの連続でいつも以上に足が疲れていて、座り込んでしまう。お握りと熱い珈琲とで少し元気を取り戻して、いざ出発。さらにアップダウンが続く。湿度が高いせいか、汗が滴り落ちてくる。そろそろ皆の頭によぎるのは、泡の出る冷えた飲み物・・・。大峰、西沢の頭、水無山分岐を経てから、上和田目指して最後の下りとなる。民家の屋根が見えてきて、あともう少しというところで、道から外れてしまい、副隊長が「道なくなっちゃった、適当に下りて」と、道なき道を突き進むことに。またまたワイルド感たっぷり〜〜。無事登山道に出くわし、林道に出る。今日はとうとう山の中で誰にも出会わなかった。長い長い下りで足がガクガクしている。近くの松姫鉱泉で汗を流そうと思い、電話で確認すると、なんと老人ホームになってしまい、立ち寄り湯はやっていないとのこと。それではと、タクシーを呼び、湯立人鉱泉へ向かう。いつもの女将さんが優しい笑顔で温かく迎えてくれる。程良い湯加減でゆっくりと湯船に浸かる。こじんまりしてアットホームな雰囲気が嬉しい温泉だ。
車中の飲み物を仕入れた後、大月駅からホリデー快速で立川に向かう。「弁慶」以外の場所がいいという女性陣からの要望で、副隊長が出してくれたのは、とっておきのキラキラカード。それは知る人ぞ知る立川名店のお蕎麦屋さん「無庵」。洒落た店構えで、店に入る前から「おお〜!」と思わず声が上がる。昼間仕事だったアユラシも夜の部に合流。店内は落ち着いた雰囲気で、BGMにジャズが静かに流れている。「喜正」を置いているのも嬉しい。洒落た徳利とお猪口で飲む喜正はいつも以上に美味しく感じられる。つまみは、もちろんまず焼き味噌だ。刺身、だし巻き玉子、天麩羅、野菜の煮合わせなども注文、お料理に合わせてそれぞれ美しい取り皿を並べてくれる。とても贅沢な気分だ。最後は冷たいお蕎麦で締める。お値段はちょっと高めだが、また行きたくなるような素敵なお店だ。
そうだ!今日は記念すべき300回目の公式山行だった。お洒落なお店で優雅なひとときを過ごせて良かった〜。 (by なお)
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