９月の三連休に、仕事仲間と「尾瀬行き」の話が持ち上がりました。テニスの合宿に行くメンバーもおり、尾瀬組は３人（まー坊、サンヒョク、私（Konochan)）です。若手二人と一緒なので、早朝、御池から燧ヶ岳へ登ることにして、東武電車の尾瀬夜行23:55浅草発のチケットを３枚予約しました。ところが、出発前日にサンヒョクがドタキャン。（「え〜〜っ！」と驚いたけど、ユジンとの結婚のかかった事件だったらしく深く追求はしなかった！）急遽、代わりのメンバーを募るも、前日では来られる人などおらず、結局、まー坊と私、二人の珍道中と相なりました。
　　御池から燧ヶ岳のルートは、途中二つの湿原を介する変化に富んだルートでした。急登に疲れた頃に現れる湿原は静寂そのもの。草紅葉の美しさはたとえようもなく、流れる雲の変化も飽きさせません。睡眠不足にもかかわらず快調で、コースタイム３時間半のところ、実働３時間で俎�ｰ（まないたぐら）に到着しました。小さな祠の周りは霧で真っ白、何も見えません。さてと次を目指し、誤って長英新道を５分ほど下ってしまいました。すぐ間違いに気付き、戻ってから登り返してほどなく西の柴安�ｰへ到着しました。雲の色が明るくなってきたので、温かい食事で体を温めながら視界が開けるのを待ちました。
　　まもなく、山頂にいた人々の歓声とともに日が射してきました。まさに「Here comes the sun.…♪」と口ずさみたくなるほどの感動。雲の流れにつれて、尾瀬沼が見え、至仏の左奥の奈良俣湖が見え…とうとう尾瀬ヶ原の全貌が姿を現しました。初めから見えていても、もちろんすばらしいでしょうが、みるみるうちに霧が晴れて現れる感動は格別です。「ああ、本当に来て良かったね！」笑顔がこぼれました。
　　いつまでもここに留まっていたい気持ちを抑えて、（結局１時間半も山頂付近にいました。）見晴新道を西に下りていきます。この見晴新道、高低差グラフを見て「典型的な沢沿いの道」だなと気付いていたものの、ず〜っとず〜〜〜っと、単調な岩だらけの沢でした。頂上の肩の辺りから先は樹林帯で見晴らしも悪く、ここ２〜３日の雨で川になっている場所が歩きにくく、何よりも「変化がない」ため、下りながら飽きてしまいました。「まだか、まだか。」２時間で下りたのに１．５倍くらい長く感じました。まー坊は元気で、足下の火山岩にも興味がある様子。溶岩やスコリア（黒や赤っぽい色の軽石）だらけですが、至仏山にもある「蛇紋岩」も見られます。この「蛇紋岩」（マントル物質と似ている）や、プレートの沈み込みと付加体など、「地球規模の話」をしていると、人間の一喜一憂する「日常の些事」など、無に等しい気がしてきます。
　　そうこうしているうちにやっと見晴十字路につきました。ここは人が多い。熊沢田代や広沢田代の静寂が思い起こされます。それはそうと、「今日の行程はほぼ終わり」ということで、第二長蔵小屋でビールで乾杯しました。見晴周辺は秋の花々が競うように咲いています。私はウメバチソウがお気に入り、まー坊はトリカブトが気に入ったようです。冷たいビールで一息ついてから、今日の宿、元湯山荘へ向かいました。酔っぱらっていたのか、第二長蔵小屋にストックを置き忘れて途中引き返したので20分くらい時間をロスしました。
　　元湯山荘は、こじんまりして旅館のような雰囲気。初めてイワナの刺身を食べましたが、「川魚は、泥臭い。」というイメージは払拭、新鮮で美味でした。まー坊は湿原と展望の充実感の仕上げが地酒で、ホントに幸せそうでした。

　　二日目は、5時過ぎに出発しました。家族の用事で早めに戻らなくてはならなくなったので鳩待峠から下りることにしました。早起きは三文の徳、なんと赤田代でシカの親子に遭遇しました。カモシカには以前尾瀬や、八ヶ岳で出会ったことがありましたが、親子は初めて。子を呼ぶ母の声も初めてです。鳴き声は「キュウ、キュウ」という感じ。韓国の南怡島（冬ソナのロケ地）にいた母親鹿が子鹿を呼ぶ声にも似ていました。まー坊はビデオカメラにシカの姿を捉えることができて感激。山の鼻へ向かう道では、木道の杭にイタチや野ウサギの糞を見つけました。その子たちの走り回る姿が目に浮かぶようでした。
　　９月、秋の尾瀬は、花と草紅葉と静けさで、心をいっぱいにしてくれました。