1日目(5/3)薬師岳(八海山)>Report By Kumachan
 雪を求めて、ひょんなことから決まった今回の八海山山行。情報が錯綜しながらも全員10本爪アイゼンを購入し、(うちピッケル購入者も1名!)準備万端で迎えた53日。連休初日で新幹線はものすごい混みよう。切符を買うにも長蛇の列。始発とはいっても2本前くらいから並ぶ方がよさそうだ。1番先に待っていてくれた副隊長・2号車が狙い目(1号車は車両が短い)との情報提供してくれたあひるちゃんのおかげで、無事8座席を確保。
 途中、車内で重装備の登山者を見かけるたびに、すぐに靴に目が行ってしまう。やっぱり10本爪アイゼン対応の冬靴は靴底の厚さが違う。

六日町駅に温泉宿の送迎バスが来てくれ、8:55には、もう五十沢温泉に到着。いらない荷物を宿に置き身支度をして、またもや送迎バスで送ってもらう。この後も、まるでお抱え運転手のようにすべてバスで送り迎えしてもらい、予定していたタクシー代が大幅に浮いたのがありがたい。
八海山ロープーウェイさんろく駅にて、くぼっちと無事合流。東京を4:30に出てきたのに、35キロの渋滞に巻き込まれたという。くぼっち、本当にお疲れ様。

総勢9名にてロープーウェイにて一気に1150mのさんちょう駅へ。片道5分で季節が冬に逆行。気温はマイナス1度。一面の銀世界に観光客は悲鳴を上げる中、我々はついに10本爪アイゼンデビューの時が来たと緊張しながらも胸がワクワク。やや10本爪アイゼン装着に手こずりながらも準備OK! フル装備をすると、なんと背中のザックの軽いことか…。

現地の方に、薬師岳からは雪庇が大きいので、視界の悪いときは無理をしないようにとの助言をいただいた。気持ちがすっと張り詰めてくる。



10:25いよいよ出発。残念なことに、ガスのせいで展望はゼロ。いつもなら、女子トークで盛り上がるマンマミーアも、緊張のためか無言のまま。ほんの少し残っているトレースだけが頼みの綱だが、先頭を行く副隊長への安心感は大きい。雪はやや腐ってはいるものの、ここ数日前に降った雪のため新雪状態で黒斑山よりずっと歩きやすい。何よりも10本爪アイゼンの威力は抜群。10本の爪がしっかり雪に踏み込んで,安定感が6本爪アイゼンとは比べものにならない。特にキックステップで登る時は、飛び出た前爪がぐさっと雪に突き刺さるのが気持ちいい。6本爪の中途半端さがよーくわかった。

ほどなく、引き返して来る一人のおばさんと出会った。トレースははっきりしないし、このガスの中では不安なので戻ることにしたとのこと。こんな状況の中でよく一人で行こうとしたものだなあと、内心驚いたが、よく笑う明るいおばさんで屈託がない。

しばらくはなだらかな登り下りを進むが、1300mあたりで急にトレースがなくなり道を探す。よく見ると、右に少し巻きそこから急斜面が続いている。ストックを半分の長さに縮め、慎重にキックステップでよじ登っていく。しかし、ストックだと、雪に突き刺さる部分が短くあまり安定しない。その一方、ピッケルはぐさっと雪に深く突き刺さるので、見ていると安定感が違う。10本爪アイゼンにはピッケルがセットといのもなるほどなあ…と思う。(でも、これでまた「皆さんピッケルも買ってましたよ。」という山幸のおじさんの殺し文句で次々とピッケルも装備してしまうのも考えものなのだけれど…)





あえぎあえぎよじ登ると11:48女人堂の小屋に着いた。小屋はしまってはいるもののほっと一息をつけるところだ。ここで小休止をとる。ここからはずっと急登が続く。このあたりまで来ると気温もさらに下がり、雪質も良くなってくる。歩いていると体は寒くはないが、時折、雪混じりの風も強くなり、ほおが痛くなってくる。途中二組ほど薬師岳から戻ってくる人に出会ったが、風で飛ばされるせいかトレースはほとんど残っていない。視界がほとんどないため、所々に打ってある竹竿の赤布だけを頼りにそれで方向を確認しながら進んでいく。(思わず八甲田山が浮かんでくる。)

12:55ようやく標高1653mの薬師岳頂上に到着。小さな鐘とスサノオノミコトみないな石像があるだけの小さな山頂である。相変わらず視界はゼロ。本来ならばここから絶景が見えるとの副隊長のお言葉に、心の目で見ようとするが、やはりぱっとしない。先を見に行った副隊長がここで引き返すことを決断。軽く食事をとることにした。この時、コンロもつけられない状況で威力を発揮したのがポットのお湯。やや冷めてはいるものの、手軽にさっと飲めて体が温まりほっとした。

そうこうしているうちに、なんと風でガスが飛ばされ視界が開けてきたではないか。目の前少し下がった所には、先ほどは全く見えなかった千本檜小屋があり、その先には丸く突き出た地蔵岳が姿を現した。振り返ると、田園地帯をはさんで金城山の峰々が広がっている。皆、歓声を上げながら写真を撮りまくっている。これは神様のご褒美に違いない。残念なことに、地蔵だけは一瞬だけですぐにガスに隠れてしまったが、八海山の端っこまで来たという実感がわき上がってきた。(しかし、後で確認したら薬師岳は八海山の八つの峰には入っていなかった…。ショック!)





13:17に薬師岳から下り始めた。下りになると、10本爪アイゼンの威力をますます実感。雲の切れ間から陽も出始め、眼下に広がる銀世界や、タノマールの作動範囲外のため名前は分からないが、彼方に白く輝く峰々を眺めながらの下りは軽快そのもの。途中では予期しなかった尻セードで遊ぶこともでき、気分爽快。登りの緊張感がうそのようである。山は天候次第でこんなにも変わるものか…

さんちょう駅近くになった頃。行く時にすれ違った陽気なおばさんにまたバッタリ出会った。天気が回復してきたため、もったいなくてまた戻ってきたとのこと。行ったり来たりと忙しいおばさんだ。でも、この天候ならその気持ちもよく分かる。それくらいすばらしい銀世界であった。

15:02にさんちょう駅到着。アイゼンを外し、ロープーウェイで下りる。なんだか下界に下りるのがもったいないくらい。我々が登ってきた薬師岳もよく見える。いつものことながら、歩いてきた跡を振り返ると、よくこれだけ歩いたなあと頑張った自分を褒めたくなる。
  さんろく駅に着くと、近くのカタクリの群生地を見に行く。一面カタクリだらけ。カタクリの写真を撮り納め、宿の送迎バスに乗り五十沢温泉へ。八海山までは行けなかったが、雪を存分に楽しむことができ、大満足の一日であった。(by kuma)

<写真のページへ戻る