2日目(5/4)金城山>Report By Konochan

  「GWは残雪の八海山に。」と耳にしたときに2日目の候補地としてすぐに浮かんだのは「巻機山」だった。雪の巻機山に登れたらどんなにすばらしい景色だろう…。しかし、それは深く手ごわい山だ。調べたところ、スキーで下山しない限り、ニセ巻機へもたどり着けずに時間切れになりそうだ。結局、巻機は諦め、今季最後の「雪あそび」はその前衛峰とも言える金城山で行うこととなった。

  金城山。山塊は大きく、夏時間でも登るのに4時間半かかる。取りつきは槻岡寺から。4月20日に大量に降った雪が気温上昇でゆるみ、崩れてくる危険があるので最もゆるやかな尾根ルートを選んだ。
  尾根に上がり見晴らしのよい東屋を過ぎてから右折し、観音山コースをたどる。平地にはソメイヨシノが咲き、苗床の籾が種まきされたばかりと聞く。山裾に敷き詰められた南魚沼の田んぼ達はシロカキしたて。水を張ったばかりの初々しい顔で並んでいる。

  山はまさに春だ。最初に出会った赤紫が鮮やかなユキグニミツバツツジを皮切りに、石仏群の小広場を過ぎると正に花の道。タムシバやオオカメノキの白、マンサクやアブラチャンの黄色。足下には薄ピンクや薄紫色のショウジョウバカマに、淡い桃色のイワウチワが咲き競う。黄緑色のシュンランや可愛いピンクのイワナシが色を添え、タチツボスミレの紫もアクセント。飽きることなく道を進んでいく。

  花々は可憐なのに、道は手ごわい。松の巨木を過ぎ、632m峰にさしかかる途中で、横に出ていた枝の跳ね返りを受けてクマちゃんがコンタクトレンズを片方落としてしまった。気持ちよい尾根歩きはその先まで。五合目にさしかかる辺りから笹が優勢になり、トラロープにつかまらないと滑り落ちてしまうような急斜面を50mほども登らなければならないのだ。「いぃDay!山岳会がよく選ぶバリエーションコースのよう。アキレス腱を伸びっぱなしにしながら四つ這いで登った、あの斜面みたい。」などと思い出し、滑り落ちそうになりながら必死に登る。
 五合目を過ぎ、傾斜が緩むと、ちらほら雪が現れ出し、六合目の826m峰の手前の平な場所でアイゼンを装着した。この地方は海がわ(西)から吹く風が優勢なので、雪も西からとけていくと、ホテルの女将さんが教えてくれたけれど、思ったよりも雪どけが進んでいたのかもしれない。雲洞コース分岐の手前はまた急登で、近くの笹につかまって、無心に登っているうちに傾斜が緩んで七合目に着いた。
 時計とここから先の急斜面とを考えて「本日はここまで」と判断。副隊長の指示のもと、昼食タイムにした。

楽しく和やかなお昼ご飯もそこそこに、八合目への道を見に行く副隊長。「何か見つけたの?」「いや。…今シーズン最後の雪だから名残惜しんでいるだけ。」気持ちがわかった。七合目の道標の脇にピッケルを刺して、「最後の雪」との記念写真をなおちゃんが撮ってくれた。

  「では、帰ろうか。」立ち去りがたい気持ちを置いて踵を返した。雪の道は先人のトレースもないのでピストンで槻岡寺に戻る。「それはそうと、立ってるだけでも滑り落ちそうだったあの斜面を下っていかなければならないんだね?」それは大変な試練になりそう。「いっそのこと、アイゼン着けたままで下りたいな。」アヒルちゃんがつぶやいた。それを初めから考えていたのか、副隊長は雪が消えてもズイズイと突き進んで下っていく。「え〜このまま行っちゃうの?!」と、半分ワクワクしながら、木の根を踏まないように急斜面を下る。
  「すごい!」
♪ジャジャッジャッジャジャン♪ ターミネーターのテーマソングが頭をよぎる。10本爪アイゼンの装着された鉄の足で、トラロープなんかに触れもせず、ガシガシと風のように急斜面を下りる心地よさよ!

 傾斜が緩み、花が優勢になってきたところで草木を痛めないようにアイゼンを外した。日本の原風景とも言える、田んぼと山々のすばらしい景色を見ながら下りる。平野に敷き詰められたタイルのような田んぼの面がどんどん近づいて来て、あっけなく槻岡寺に戻り着いた。脇を流れる小川でアイゼンの泥を流し終わる頃、お馴染みになった宿の運転手さんが送迎車で現れた。
 車窓から振り返り,離れゆく山を見て思った。「今朝、浅草岳に向けて5時半に宿を発ったクボッチは、頂上を踏んでもう下山している頃かな。」と。
 頂上まではたどり着けなかったけれど、大いなる金城山。私にとって忘れられない山の一つになった。

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