至仏山・景鶴山 登山のご報告
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特別企画 MAMMA MIA ! 山行
尾瀬*至仏山(2228.1m)&景鶴山(2004m)
2010年5月2日(日)〜3日(月)
コースタイム
<1日目>
調布インター[3:35」〜沼田〜戸倉〜(バス)〜鳩待峠[7:30/7:45]〜P1[8:40/8:50]〜オヤマ沢田代[9:42/9:50]〜至仏山山頂(2228.1m)[10:35/昼食/11:38]〜高天原[12:00]〜山の鼻[13:00/14:05]〜竜宮小屋[15:25](泊)

<2日目>
竜宮[5:45]〜ヨッピ橋[6:10/6:25]〜尾根上の登山道[7:00]〜(食事)[7:35/8:05]〜与作岳[8:35/8:45] 〜景鶴山[9:34/9:42]〜与作岳[10:22/10:52]〜(迷走)[11:20/12:00]〜尾瀬ヶ原出口[12:35]〜ヨッピ橋[12:50/13:10]〜牛首[13:47/14:25]〜山の鼻[ 15:00/15:45]〜鳩待峠[16:53]〜(タクシー)〜戸倉〜しゃくなげの湯(入浴)[18:15/19:30] 〜沼田〜圏央道〜中央高速〜調布インター[23:20]
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<第1日目>
 隊長も副隊長も都合がつかず、今年のゴールデンウィークは日帰りハイキングかな…と、諦めていた矢先、くぼっちから「ねえ、一緒に景鶴山に行かない?」という熱い誘いが来ました。菊丸からも「これを逃したら二度と行けないよ、Konochanも行こうよ!!」とラブコール。景鶴山は初めて残雪の尾瀬を体験したときからの憧れの山。でも、残雪期以外は入山禁止、頂上近くはナイフエッジにハイマツの藪漕ぎ。百名山を4年で99制覇した超健脚のくぼっちはともかく、私などの初心者が行くには畏れ多い…。結局、勇気ある決断をするのに数日かかってしまいましたが、副隊長から3年前のルート地図をもらい、ネットでも入念に調べて、「行こう」と決めました。当初は2泊3日のはずでしたが、Woodyさんが不参加になって女3人となり、希望1泊2日、様子によって2泊に延ばそうということになりました。
 出発は渋滞を避けて3時半調布発としました。夜中の中央高速にしては車が多いものの、順調に流れています。なんと6時半に戸倉に到着。鳩待峠には7時半に着きました。早起きは三文の得、「至仏にも登れる!!」ということで、アイゼンを装着の後、至仏山を目指すことにしました。
 私にとっては3回目の至仏山ですが、コースは赤テープやトレースで迷いようがなくてもやはり先頭は緊張します。気楽についていった時の自分がいかに隊長副隊長に頼りきりだったのかがわかります。1回目の休憩も2回目(オヤマ沢田代)の時も、ちょっとハイペースだな、と思いつつも、くぼっちの単独行ならさらにこの8割くらいの時間なのだろうと想像し、山の鼻から先は2時間平らだからまあいいか、菊丸も快調だし…などと考えながら歩いていました。至仏山に向かっては小至仏の東を巻いて行きます。奇特にも小至仏の頂上経由で縦走する人のトレースが三人分ほどついていました。そして至仏山の山頂に着いて、昼食。スキーヤー、スノーボーダーも半分くらいいます。気のせいかもしれませんが、落ちているゴミがなんだか目につき、つい、人の落とした割り箸まで拾って自分のリュックに入れてしまいました。
 360度のパノラマを満喫し、景鶴や燧ヶ岳、平ヶ岳や岳が倉山などに1年ぶりに挨拶したあとは、高天原に向かって下りていきます。くぼっちは「壮大な雪面のシリセード」を心から楽しみにしていたので「高天原の下からよ。」と言うのに、もう待ちきれずに手前から滑っています。今年は雪が多いので、ま、大丈夫か。高天原の木道下から私たちもお楽しみシリセード開始。ところが、菊丸のレインウエアは予想以上に滑りすぎ、いきなり逆さになったりストックを落としたり。結局、無難に歩いて下りることにしました。私はレインパンツが古びていたせいかほどよい滑りで、踵の制動と背中の角度でスピードコントロールもうまく行き、楽しむことができてラッキーでした。
 今日は東京では気温27度を超えるほどの夏日だったそうで、ここ尾瀬も日差しの威力で相当雪がとけ進みました。頂上付近は冷たい風が吹くので雪解けの表面が再び凍って一面薄氷が張っていましたが、山の鼻へ続く最後の道は向こうずねまでズボズボはまる重くて厄介な雪です。こういう場合は、スノーシューかかんじきがほしいな、と思ってしまいました。
 足腰の訓練(?)を十分にして山の鼻に到着したときは汗だくで、3人とも考えていることは同じ。「竜宮まで後は平らだから、もう、いいよね!」と、山の鼻小屋でビールで乾杯!もーたまりませんっ!「副隊長がいたら叱られるかな?でも、ケーブルで下りるだけの御獄山や筑波山の時も呑んでたから、隊長、副隊長がいてもこうしていたよね!」などと言い訳しながらマンマ・ミーア山行は続きます。一息入れて気分も高揚し、今宵の宿「竜宮小屋」までもうひと頑張り、出発しました。午後のゆるんだ雪原は歩きにくかったですが、菊丸はアイゼンつけて、私とくぼっちはつぼ足で行きました。
 今年は木道がほとんど見えない一面の雪原で、「雪解けがもう少し進んだ方が風景としてはきれいだな。」と思いました。途中、景鶴山が見えたり、カルガモがいたりしましたが平らな雪道は単調に感じて、「早く小屋で荷物をほおり投げて大の字になりたい。」と思うと自然、足もよく進んで、夏道の地図と同じ時間で着きました。入浴後の、雪で冷やしたビールとアンチョビペーストがたまらなかったです。
 竜宮小屋には30人くらい宿泊客がいましたが、声をかわした人は皆、景鶴山に登ってきた人や明日登る人ばかりでした。ヨッピ橋から直で与作沢東の尾根にとりついて登ると近いとか、いや、笹山西の鞍部から行くのが王道だとか、色々な情報を仕入れたのち、翌朝に備えて8時半から寝てしまいました。

<第2日目>
 明けて5月3日、またまた快晴です。4時半起床して軽く腹ごしらえ。菊丸は枕が変わると毎回眠れなくて苦労していますが、今回も一睡もできなかったとのこと。怪我のないように心して行かなければなりません。私自身も、朝から忘れものしそうになり、気を引き締めていざ、出発。
 雪は締まって朝のうちは歩きやすいですが、新しい踏み跡をたどっていったらヨッピ橋はもう少し東で、沢沿いの木立に沿って進めばよかったと後からわかりました。朝のヨッピ橋は霜で白く、滑りやすいのでアイゼンをはずして慎重にわたりました。渡り終わってからは上がればどこからでも笹山から与作岳につながる南東尾根にぶつかるので、地形を見ながら登りやすそうな場所を登りました。ヨッピ橋を渡りきった場所から30分で尾根道に出られ、順調です。1653m峰の東側が急傾斜で、木の根の下側の雪が大きくめくれて危険なところがありましたが、踏み跡は安全に巻くようになっていました。
 尾根筋は一本道で与作岳と景鶴山の間以外はアップダウンもさほどでなく、景鶴ツアーを率いるガイドさんが「燧ヶ岳や至仏山の方がよっぽどきついよ。」と言っていたとおりでした。
 与作岳から下りてのぼり返して、景鶴の肩でご夫婦+1と見られる3人組に遭遇。「お一人ですか?」「いえ、女3人なのですが二人はもうあそこを登っています。」その方たちのように肩にリュックをデポして空身で行くのが得策と思われましたが、「お〜い!」と呼んでもくぼっちと菊丸はもう豆粒くらい彼方。自分だけリュックを置くのもなんだから「ま、いっか。」と、後を追いました。
 雪の稜線を登っていくと、大きなミッキーマウスの耳のような岩。それを越えてナイフエッジを上がるといよいよ頂上です。感動の登頂!3年前の井手山岳会の写真で見た見覚えのあるプレートです。「隊長、副隊長、やったよ!!」景鶴山から見る燧ヶ岳、至仏山、平ヶ岳、尾瀬ヶ原。雲一つない青空。感激もひとしおです。狭い山頂には単独行の中高年の方が3人ほど。また、私たちが登ってきた反対の西側からひょっこり表れたカップルも。単独行の人は正面の沢から尾根にとりついて登ってきたそうです。見下ろすと一部なだれているような危険そうな場所です。篤志家ばかり、上には上がいるんだな〜と感心しましたが、この日差しで、キックステップの階段状雪面がゆるむと怖いなと思い、下りはじめることにしました。
 ことさら慎重に歩を進めましたが、下りるときはあっけなくあっという間に下りてきてしまいました。さあて、与作岳山頂の東の鞍部でコーヒータイムにしたのがまだ10時半。「今日は余裕で下りられそうだね。」「帰りもちょっぴりショートカットで緩やかなところをヨッピ橋目指して下りてみよう。」このふと魔が差したのが失敗でした。上がってきたところより一本手前の緩やかな尾根は実はその先が急激に切り立っており、「私が道を作るからついてきて!」と、あっという間に70〜80mくらい下りたくぼっちと、キックステップして巻きながら下りる私に、最後からついてくる菊丸。くぼっちは遙か下で「ここまで下りれば、後はシリセードできそうな緩斜面だよ!!」と大声で呼んでいます。ゆっくり時間をかけて九十九折りすれば下りられなくもないけど、やっぱり無理だ。「菊丸、もどって!!正規の道を通ってヨッピ橋で待ち合わせよう!」もう私の所まで半分くらい下りていた菊丸でしたが、安全に行ってもらうことにしました。菊丸に危険なら私にも同様に危険なのに、人間とは浅はかなもので自分が滑ったり落ちたりする事は想像しないものです。でも、菊丸に迂回して安全な道に戻ってもらったことを知った時、くぼっちは50mを果敢に登り返して来ました。「やっぱり、パーティが分かれない方がいいよ!戻ろう、このちゃん!!」見上げると私も30mくらい登り返さなければ行けません。でも、やはり「迷ったら、もと来た道を戻れ。」登山の心得書に書いてあったとおりでした。
 新品の地図付きのGPSをもっていたことも油断につながりました。後日、カシミールの詳細地図で下りようとしていたすり鉢状の沢を調べてぞっとしました。もう一本手前を来ているつもりでしたが、よりによって一番等高線の混んでいる場所を下りようとしていたのでした。尾根に戻ってからは、ひたすら菊丸を追いかけます。そこでまた先ほどの3人組に会い、緑のリュックを背負った女性に会わなかったか尋ねたら、ヨッピ橋に帰ると言うので、この青テープに沿って行きなさいとアドバイスしたとのこと。「ああ、菊丸、待っててね。すぐ行くよ。」そして笹山の西に沿って尾瀬ヶ原へ下りてくるところで「このちゃ〜ん!菊丸に会えたよ〜!!」というくぼっちの声に「わかった〜!あたしもすぐ行く〜!」真っ白な雪原に二人の姿を認め、無事を喜び合いました。
 午後のヨッピ橋は、霜で滑ることもなく、体も温まっているので、両手でワイヤーロープをもちながらすいすいとわたれました。景鶴山や与作岳、笹山までの尾根を見ながらひたすら歩きます。そして牛首で休憩。そこでまた先ほどの3人組と会いました。リーダーのニックネームは社長。社長さんは親友の形見というピッケルを片手にテントを担いでいます。くぼっちとため息をつきました。「そうだよね。さっき入り込んだような所は、ストックなんか効かない。ピッケルでないとだめなんだ。」ピッケルでないと下りられない山なんてとても無理。大自然の前では謙虚に身の程をわきまえなくては、と改めて思いました。
 牛首まで来れば山の鼻はあと一息。山の鼻で「花豆ジェラート食べようね!」ゲンキンな食いしん坊はそれを合い言葉に一気に早歩き、夏道でも40分の所を30分で着いてしまいました。花豆ジェラートにオレンジ&野菜ジュースまで飲んで、さらにもうひと頑張り、鳩待峠までの上りです。この最後の3.3kmがきつかった。
 鳩待峠まで今まで、夏道も含めて5〜6回来たことがあるのに、「こんなに登ったっけ?」と思うほどきつい最後の上りでした。そういえば、今まではこんなハードスケジュールでなく、明けて翌朝のんびり登ったから印象が違ったのですね。私たちは3人とも各家庭の中心人物。できればゴールデンウィークに3日も家を空けるのでなく、2日で済ませたいと、ちょっと欲張ってしまいました。2日間で合計30km。そして失敗も自分の成長の糧。後日、飲み会時にかかってきた電話で、副隊長の「がんばったね。」の一言はしみました。「うん、がんばった。」そう答えながら、お父さんに誉めてもらったような温かい気持ちになりました。